日本で未承認の乳がんの薬【elacestrant】

elacestrant(エラセストラント)は、ホルモン受容体陽性の乳がん治療において注目を集める薬です。ホルモン受容体陽性の乳がんは、特定のホルモン(エストロゲンプロゲステロン)に反応し、成長する特性があります。

こちらの記事ではelacestrantのドラッグロス状況をご紹介しますが、まずはelacestrantの作用機序や効果について解説します。解説は不要!という方はこちらからご覧ください。

 

elacestrantとは

elacestrantはホルモン受容体を標的として、がん細胞の成長を抑制することを目的としています。
フェソロデックス注(一般名:フルベストラント)の錠剤版と解釈しています。(間違っていたらすみません)


elacestrantの作用機序

elacestrantの作用機序は、エストロゲン受容体と結合することです。通常、エストロゲンがこの受容体に結合すると、がん細胞の増殖が促進されます。
elacestrantはエストロゲンと同じようにエストロゲン受容体に結合しますが、結合すると、がん細胞の増殖を抑制する効果があります。

 

乳がん治療への応用

elacestrantは、主にホルモン受容体陽性の乳がん患者に対して使用されます。このタイプの乳がんは、女性ホルモンに反応する性質があり、ホルモン療法が一般的に用いられます。elacestrantは、新しい治療法として、治療の幅を広げることが期待されています。

 

期待される効果

elacestrantは、乳がん細胞の成長を制御し、腫瘍の進行を遅らせることが期待されています。これにより、患者の生存期間や生活の質が向上するでしょう。
また、他の治療法との併用においても、相乗的な効果を発揮する可能性があります。

 

注意点と副作用

elacestrantの副作用は、吐き気、疲労感、関節痛などが報告されています。

 

各国の承認状況

アメリFDA、欧州では「Orserdu」という製品名で承認されており、イギリスNICEでは費用対効果を検証中です。
そして、日本では残念ながら未着手です。(2024.3月確認)

参考:FDA approves elacestrant for ER-positive, HER2-negative, ESR1-mutated advanced or metastatic breast cancer | FDAOrserdu | European Medicines AgencyProject information | Elacestrant for treating oestrogen receptor-positive, HER2-negative advanced breast cancer with an ESR1 mutation after at least 1 endocrine treatment [ID6225] | Guidance | NICE

 

PHⅢ試験を簡単に紹介

PHⅢ試験(EMERALD試験)を簡単にご紹介します。

対象
ホルモン療法による1~2ラインの治療の後に乳がんの病勢進行が認められた患者
(内訳)エラセストラント345 mg群239例、ホルモン療法群239例:フルベストラント166例およびアロマターゼ阻害薬73例
アロマターゼ阻害薬:アナストロゾール、レトロゾール、またはエキセメスタン

結果
ESR1変異を有する患者228例に対するPFSとOSの結果は次の通り

  • PFSの中央値は、エラセストラント群3.8カ月、フルベストラントまたはアロマターゼ阻害薬群1.9カ月であった。(p値=0.0005)
  • 12ヵ月生存率(OS)の中央値はエラセストラント群82.6%、フルベストラントまたはアロマターゼ阻害薬群73.6%で有意差は見られなかった。(中間解析)
    PFS:がんが悪化せずにいられる期間

 

PHⅢ試験の感想

PFSは2ヵ月程しか変わらず、OSは有意差がみられなかったのにも関わらず、FDAで承認されていました。
理由が気になって読み進めると、FDA迅速承認プログラム対象でした。
NICE含め、今後の承認状況が気になるところです。